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彼の生活は間違いなく最先端で僕が憧れるそれだ。夜は何してるの?って聞けば、とぼけた顔でインターネットって言ってた。人生は自由だ。
暮らしの主人公は「ルーベン」in バギオ
ベンカブ美術館で最高のアート体験をした僕たちはアシン温泉に向う事にした。道はひたすら坂を降りる一本道、何気なく歩いて行く事にしたがベンカブ美術館からアシン温泉までは歩くと2-3時間掛かるらしい。いや、実はその時間が掛かる事を知ってたのに何故か歩いていた。フィリピンに来てからあまり未来の事は考えなくなった。今がどうあるかが重要だし、きっとなんとかなる。
歩いて30分ほどでアトリエへの看板を見つけた。
フィリピンではほとんど見ない家の形だ、後で気がつきたんだけどルーベンのお父さんはイギリス人でイギリスでは良く見る家の形らしい。看板も何もない、入っていいのか個人宅なのかもよくわからない雰囲気の家にズカズカと入り込もうとした時に一人の男が声をかけてくれた。
彼の名前はルーベン。写真は竹の種類について熱弁している所だ。あなたは誰なの?(ビジネスマン?アーティスト?ヒッピー?農家?クラフトマン?)って質問した時Farmerだ、と胸をはって答えた彼だけど生活そのもの、生き方そのものがアートだ。
彼が僕らを最初に案内したのは、彼の工房だった。
中では4-5人のフィリピン人女性が熱心にトロフィーを作っていた。そう、何かの大会で優勝した時にもらえるアレだ。主に受注先は政府のゴルフ・コンペで彼らは金持ちだから心配いらないと笑っていた。
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彼の工房を外から見るとこんな感じで最高にイケている。竹で装飾されたキッチンには、洗い場の真正面に大きな窓が設置されていて外が良く見え、すぐそこを小さな小川が流れているのでせせらぎの音が生活のBGMだった。仕事と生活の隔たりをあまり感じさせないその空間はとても心地いい。
僕のバンブーハウスを見ないか?
彼の仕事は多岐に渡る。
竹は自分で植えて8年掛けて育て、そのまま使うと数年しか持たない竹も薬剤に漬け込むと100年以上の耐久性を身につけると教えてくれた。彼はアトリエと3つの農場を持ち、地元(生活圏)でしか販売しないルービンのオイスターマッシュルームと自家製卵の売上は生活費として、アトリエで生産しているトロフィーで稼ぐお金は、家や車、次のビジネスを賄っているそう。もうすぐ自慢の竹で作る家具屋さんをOPENさせる。
明らかに僕達に気を使った彼の英語はとても聞き取りやすく、何より突然の訪問をこんなにも喜んでくれる事が嬉しかった。対して気の利いた事も話さない、手土産も持って来なかった僕らを受け止めてくれるルーベンがとてもかっこよく見えた。
彼のバンブーハウスに向うには、アトリエからいくつかの階段を降りていく。その途中で木になったパパイヤをもぎ取った。これがフィリピンの生活だ。
バギオにはアーティストが多く住むと聞く、個性的なカフェがたくさんあるし街の中もカラフルで山々に連なる街は目をみはる光景だ。本当かどうかわからないが、スタジオ・ジブリの「ハウルの動く城」は宮﨑駿さんがバギオを訪れた時にその構想を思いついたと聞いた事がある。山の中で自分と深く向き合い、また、それを許すようなのんびりした時間が流れるからだろうか。
ただ、バギオでアーティストに出逢いCOFFEEを共にするような経験があっても彼らの生活に踏み込む経験は間違いなくスペシャルだ。そして、僕は今、彼の家の中にいる。ルービン自慢のバンブーハウスはルービン本人と彼のスタッフによって建てたそうだ。
バンブーハウスには彼の生活があった
間違いなく彼はここで暮らしている、そう感じるには十分な生活空間がそこにあった。不思議なのは生活を感じる雰囲気がありながら生活用品があまりに少ない事。物があまりに少ないんだ。
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テラスから見える山々に彼の農場があるらしい。ここから見える家々を指差して家族構成や自分との関わりを嬉しそうに話してくれた。彼はバギオのこの地元に暮らしているんだ。
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農場の中にも家があり、バンブーハウス、農場の家、アトリエのある母屋を行き交うのが彼の生活のスタイル。
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バギオでアーティストに学ぶ、生活の楽しみかた。
自分が思う美しさより、人が感じる美しさを大事にし始めたのはいつからだろう。同じ様な写真を撮り、同じ様なフィルターを通してSNSにあげることに喜びを感じるようになったのはいつからだろう。
思いっきり自分の好きな事をやればいい、思いっきり自分の好きな色を好きだって言えばいい。ルービンの暮らしはとてもカラフルだ。
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